トップ  > 心を支える言葉 > 晴佐久昌英「手」

晴佐久昌英「手」

私は7ヶ月間、息子に付き添って24時間病院で缶詰生活を送っていました。気を遣いながらの大部屋生活では、プライベートを守るものはカーテン1枚。苦しみぐったりしているわが子を目の前にして、正気でいられなくなる時もありました。

「治してください、生かしてください、私からこの子を奪わないでください」

何度も強く、心の中で叫ぶように祈りました。闇の中から聞こえてくる声をかき消すように、息子も私も必死の思いで過ごした入院生活でした。

病室の窓から見上げる空はむやみに明るい
治らないわたしはこんなに暗いのに

病室の窓から見下ろす街もやたらと元気だ
出られないわたしはもはや亡霊のよう

消灯後の一人部屋に時計の音がいつまでも続く
あといくつの夜を耐えればゆるされるのか

もずねこ治してください生かしてください
もう一度だけもとに戻してください
歩かせてください食べさせてください
もうこれ以上いじめないでください
せめて今夜だけでも痛みをとりのぞいてください
もうだめですもう限界ですもうこれ以上

闇の中へ思わず手を伸ばした瞬間
何かにさわってはっとする

だれもいないはずの深夜の病室
数秒息を止めてようやく気づく

さわったのではない
さわられたのだ
むこうから伸ばしてきた手に



晴佐久昌英・著  だいじょうぶだよより引用

本の紹介

「星言葉」で多くの人々を励まし反響を及ぼした著者の、さらなる優しさと苦しみへの共感から生まれ出た詩の数々。「初雪」「病気になったら」「贈りもの」「クリスマスの夜は」など、32の福音詩を収録する。(Amazonより引用)
Amazon商品詳細ページを見る
楽天ブックス商品詳細ページを見る

作成:2009-11-26 20:58:24    更新:2009-11-26 20:58:24
戻る晴佐久昌英「苦しいときは」 カテゴリートップ 進む晴佐久昌英「いいよ」

当サイトは本やインターネットから集めた情報をもとに、素人が作成しています。
また、闘病記の治療内容や検査結果等は個人により差がありますので、
必ず主治医・担当医にご相談ください。

PAGE TOP