鎌田實さん「憎しみや悲しみを、横に置く」

生きていれば、辛いことはたくさんあります。憎しみや悲しみ、理不尽なことに人生は包まれている。にもかかわらず、私たちは前を向いて歩いていかなくてはなりません。辛いことや悲しいことはちょっと横に置いておいて、新しい一歩を踏み出さなくてはいけない。「にもかかわらず」という発想。そして「横に置く」という行為。それは、前を向いて歩くことへのヒントとなるような気がします。

いつの日か、悲しみを横に置けるような時が来ると信じています。人間には、絶望の中を生き抜く強さが備わっている。本人が気づいていないだけで。

愚痴や憎しみや批判から新しいものが生まれることはありません。大切なことは、どんなに苦しく辛いことに出合っても、「にもかかわらず」前を向くことです。

月刊PHP 2011年11月号(No.762)p57-p63
鎌田 實さんの特集より引用

もずねこ憎しみや悲しみを「横に置く」という発想が新鮮だった。それらの思いは、自分の中で押さえつけたり、時とともに和らいでいくものだと思っていたからだ。捨てたくても捨てられない感情であり、戻りたくても戻れない過去を悔やむ気持ちに、自分自身が押しつぶされそうになることがある。無理に捨てよう、切り離そうとしなくていいのだ。

苦しいことや辛いことに直面すると、そのことに集中してしまって体調を崩す。愚痴をこぼせば、そんな自分が嫌になる。すべてが悪い方向へ突き進んでいくような恐怖に襲われる。なぜだか悪いことが続くのだ。

どんな状況であっても、幸せは必ずそばにある。「愛する人が生きている」ただそれだけでも十分幸せだと思ったら、自分が抱えて離そうとしない憎しみや悲しみがちっぽけに見えてきて、すっと横に置くことができた。この際、横に置いたことも忘れてしまえばいいと思うのだが、困ったことに忘れたい出来事ほどよく覚えている。

憎しみや悲しみをいつも抱えたり背負ったりしていないで、たまには横に置いてみるのもいい。いつかその重みを感じなくなったとき、心の優しさと強さへとカタチを変える。そのためには、やはり「どんなに苦しく辛いことに出合っても、にもかかわらず前を向くこと」なのだ。