小児科医の立場から

主に小児科医の立場から、国立病院機構九州医療センター小児科でのプレパレーションの導入と実際にどのように行っているのか、プレパレーションを実施しての感想(効果)について。 

国立病院機構九州医療センター小児科医長 / 周産期センター 佐藤 和夫先生
 小児看護  2006-5 vol.29 NO.5  より引用

導入・実施

プレパレーションを知った小児科学会の翌日の小児科外来で、まずできることから始めた。外来での採血・点滴・X線撮影など一般的な処置の際に実施していることは次の通り。

  1. 保護者より先に子どもに行い、できるだけ分かりやすい表現で説明すること。
  2. 処置時に親子を離さないこと。
  3. 馬乗り固定をしないこと、できるだけ押さえつけないようにすること。
  4. 気をそらすよう心がけること。

意識的に親子を離さなかった最初の経験

外来で採血をした3か月の乳児とその母親。

処置室から出ようとする母親に「そばに付き添っていただけませんか」とお願いして同意されたので、母親に抱っこしてもらい、看護師と一緒に採血をした。採血が終わるころ、気がつくと母親の目から大粒の涙がポタポタと落ちていた。採血が終わった後に「一緒にいることがつらかったのですね。外でお待ちいただいたほうがよかったでしょうか」という問いに、「子どもが泣くのを見るのはつらかったです。でもドアの外で心配するより、子どものそばにいてやれるほうがずっとよかったと思います」という答えが返ってきた。

その日から採血・点滴は家族が希望されない限り原則として親子を離さない方針とした。

感想・効果

プレパレーションを実施してみてその効果がきわめて大きいことを実感している。子どもにわかりやすい言葉で説明するので、保護者にもわかりやすい。何よりも驚いたのは、保護者(主に母親)がいることで子どもの恐怖心がかなり軽減されることである。特に幼児において母親の存在による不安軽減効果は顕著であり、多くの症例でよりスムーズに処置ができるようになった。

これまでの母親を外に出してのグルグル巻きの固定(時には馬乗り)がいかに子どもたちに恐怖を与えていたかを実感した。痛いということ以上に母親と離れる不安と押さえつけられる恐怖がいかに大きいかということ、それらを取り除くことがいかに重要かという事実を小児科医は認識する必要がある。これまでの医療はなんだったのか、プレパレーションの普及で小児医療の現場が変わる、これが正直な感想である。

引用

小児看護  2006-5 vol.29 NO.5 / へるす出版