私にもできることがあった

押さえつけるしかないの?

薬を上手に飲むことができていたかずきが、治療開始1週間ほど過ぎたころから内服を拒むようになりました。それもそのはず・・・朝からいくつものにがい薬を食後に飲まされるのですから、大人でも嫌になってきます。しかし、感染のことを考えるとどうしても飲ませなければいけないのです。

「これを飲むと体の中のばい菌をやっつけてくれるよ」、「かずきが上手に飲めるところを看護師さんに見てもらおうよ」あれこれ言葉をかけるのですが、「嫌だ、飲みたくない」が続くばかり。

最後にはいやがる息子の腕や体を押さえつけ、口をこじ開けて投与していました。吐きそうになったときは口を押さえて「吐くな!!」と怒鳴りました。吐くこともなく自分で飲めるようになるまで、2週間ほどはこのような行為が繰り返しありました。

「何かに混ぜたり、褒めたり励ましたり・・・それでもダメなら押さえつけて」

それ以外の方法を耳にすることはなく、病院に缶詰になった生活の中で、私の心もボロボロになっていきました。・・・治療や予防のためとはいえ、これじゃあ虐待と同じやんか・・・でもどうしたらいいのかわからない。

隠すことは息子のため?

また、カテーテル挿入、マルクやルンバールの時にはそれらがあることを息子に隠し続けました。絶飲食でお腹をすかせて食べたいと訴えても「ダメなんだ・・・」としか言わず、苛立つ息子とただ時間を過ごすことしかできませんでした。

お腹がすいているときに食べることを思わせるようなことはしてはいけない、処置されるまでの時間を楽しく過ごせるように隠し続けなければいけない。私の頭の中には「かずきには隠す」ことしかありませんでした。それが息子のため、恐怖でおびえる時間をどれほど少なくするかということが最善の方法だと考えていたからです。

プレパレーション?

私が最初に「プレパレーション(プリパレーション)」という言葉を耳にしたのは、平成17年10月に岐阜で行われた「中部小児がんトータルケア研究会」に参加したときのことでした。チャイルド・ライフ・スペシャリストの五十嵐さんと世古口さんの話の中に、さがしていたものがありました。避けて通っていた「処置について子どもに話す」ことについて、改めて考え直すことができました。

小児科医師の「今まではどのように押さえつけて処置をしていこうかということしか考えておらず、押さえつけないで処置をすることなど考えたことがなかった」という感想を耳にして心が痛みました。

ケアって何だろう。親にもできることって何だろう。

意見書の提出

もずねこ病院の廊下でも、処置室で泣き叫んで母親を求める子供たちの声を聞きながら、涙ぐんで待っているお母さん方の姿を何度も何度も見てきました。「どうして付き添わせてもらえないのよ」怒りと悲しみに震えるお母さんの声を、私は病院側に伝え、病院の看護体制の見直しをお願いしようと決めました。そして、プレパレーションの資料と共に意見書を看護部長室へ届けてきました。

本当は医師や看護師などにプレパレーションを行ってもらうのが一番よいのですが、時間や人手不足を考えるとそれもなかなかと難しく、医療者がそれらを学び、準備している間にも子どもたちの治療は進んでしまいます。今、悩んでいるご家族もたくさんいらっしゃいます。だったら・・・親ができる限りのことをしていけばいいんじゃないか、子どものことを一番理解しているのは親なんだもの。マニュアル通りには進まないかもしれないけれど、親の努力はきっと子どもの心を支えているはず。

私たち親にできること

子どもの採血についてネット検索していて気づいたことは、親の意見は「付き添いたい」「失敗しないで処置してもらいたい」など。医療者側の意見になるとこの逆で、「廊下で待っていてほしい」「プレッシャーを与えないでほしい」「すぐに終わるんだから泣かずに我慢するように言い聞かせてほしい」など厳しい意見もありました。

確かに、1ミリほどの細い血管に針を刺すことは至難の業です。慣れた看護師さんはそれを簡単にこなしている(ように見えます)けれど、新人の看護師さんや処置の苦手な看護師さんの場合、私たち親が邪魔になるでしょう。

処置については医師や看護師の腕にかかっていることですが、付き添うこと以外に私たちにできることはないでしょうか。プレッシャーを与えないのもそのひとつだと思います。しかし、いつも失敗する看護師さんでは子どもも辛いですから、他の看護師さんに代わってもらえるよう相談してみるのもいいかもしれません。遠慮しなくてもいいのです。あなたの思い(子どもの思い)を医療者に伝えること、これも私たち親にできることだと思います。勇気を出して。大丈夫。きっとあなたも思いを伝えることができるから。

OK Wave
「乳幼児の点滴や、処置を行う時に親を子供から離す事についてどう思われますか?」
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