輝く子どもたち 小児白血病 完治の記録

ぼくの名前を呼んでくれた看護師さん


 

次男・かずきが入院していた7ヶ月間、長男・よしきは私の実家で預かってもらいました。残業で帰りが遅く、家事ができない夫に子育ては無理だと思ったからです。よしきの気持ちも考えず、私たち夫婦は両親に甘えていました。両親と弟たちは、よしきを深い愛情で包み大切に育ててくれました。けれど、祖父母や叔父では満たされない寂しさを、よしきは抱えていました。

重い病気になった弟、病院で弟と寝泊りしなければいけないお母さん、仕事が忙しいお父さん、ぼくの世話をしてくれるおじいちゃんとおばあちゃんとおじさんたち・・・・・・ぼくは寂しくても我慢しなければいけない。自分に言い聞かせながら、布団の中で声を押し殺して泣く日もあったと聞いたのは、かずきが退院して随分経ってからのことでした。6歳のよしきも、必死で闘っていたのです。

よしきが小学1年生になったと同時に、かすが退院しました。新しい環境(学校生活)、感染を気にして神経質になっているお母さん・・・・・・よしきの「我慢」はまだまだ続いていました。そして何かの拍子にその思いが爆発し、手のつけられないほど泣き暴れました。それが続くようになり、ようやくよしきの本当の心に気づきました。

病気の子どものきょうだい支援をしていらっしゃる「しぶたね」ひさもさん(HP:へなちょこcafe)にアドバイスをいただき、よしきの本当の気持ちを聞くことができました。そして、「よしきも頑張っている」と認めたことにより、泣き暴れることがなくなり落ち着いてきました。たくさん抱きしめました。ふたりだけの時間を大切にしました。よしきを愛している、大切に思っていることをきちんと言葉にして伝えました。

「ぼくは注射をたくさんして頑張ったんだから!」と、過去を振り返るかずきに「オレだって寂しかったけど頑張ったんやで!」少し目を潤ませながらも、自分の気持ちを言葉にできたよしきを見て嬉しくなりました。

かずきだけのお母さんじゃない!

入院中、先生や看護師さんから「かずくんママ」と呼ばれていました。同じ病棟にいる親同士も、「○○ちゃんママ」「○○くんパパ」と呼び合っていて、なんだか患児の付属品をイメージする呼び方だといつも感じていました。 私が「かずくんママ」と呼ばれることに、よしきも違和感があったようです。

「お母さんは、かずきだけのお母さんじゃない。ぼくのお母さんでもあるのに、どうして病院の人たちは"かずくんママ"って呼ぶの?」

母に連れられてお見舞いに来たよしきは、いつもひとりで小児病棟のプレイルームで待っていました。「よしくん!」そう声をかけてくださったのは、かずきの担当看護師さんでした。

「お母さん!さっきの看護師さん、どうしてぼくの名前を知ってるの?ぼくのこと、よしくんって呼んでくれたよ」

ほんの少しの会話だったそうですが、自分の存在に気づいてくれた人がいる、ただそれだけのことが、よしきにとって大きな喜びでした。

名前を呼ぶというのは、コミュニケーションをとるうえでとても大切なことだと思います。それは自分を覚えていてくれたという嬉しさ、安心感、親近感・・・たくさんの幸せをもたらします。名前で呼ぶことは、その人の存在を認め尊重していることだと思います。よしきが、「名前で呼んでくれた看護師さんがいた」と目をキラキラさせて喜ぶ姿は今も忘れられません。

かずきが入院していたあの頃、私は愛情を込めて「よしき」と呼んだことがあっただろうかと思い返しました。よしきと会ったときは、いつもなにかしらの用事を抱えていました。少ない時間で買い物を済ませ、調べものをしなければならない・・・そんな時に「ねぇ、お母さん」と抱きつくよしきに苛立ったこともありました。「よしき!」ただ固有名詞を口にしているだけ。呼びかけるためだけに使われる「名前」。 よしきは寂しい思いをぐっとこらえていたでしょう。

「布団の中で、誰にも気づかれないように泣いた」

よしきからそう聞いたとき、胸が張り裂けそうでした。 あの時、愛情をこめて名前を呼び、抱きしめることができたなら・・・後悔することばかりです。けれど終わってしまったことはどうすることもできませんから、今を大切にして子どもたちの名前を愛情込め呼びたいと思います。「はい」と返事が返ってくるのも、あと何年かな・・・。まだまだと思っているうちに、すぐに巣立っていくのでしょうね。

作成:2009-10-19 13:59:12    更新:2009-12-7 15:05:26
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