生きている、ただそれだけのこと


 

告知されたとき、ただ子どもの命が助かれば それでいいと思った。
 治療が始まるともっと副作用の軽い治療法はないのかと思い、
 治療の半ばになると晩期合併症のことが気になり、
 治療が終わると再発しないだろうかと不安になる。

 

「病気になる前の あの元気な体に戻してください」
 「病気だったことが嘘のように 何も問題なく成長しますように」
 ついつい欲が出てしまう。


 

息子の輝かしい将来へと伸びるまっすぐな道には、
 様々な困難はあっても、それがどこまでも続いていることに何の疑いもなく
 それは当然のことだと思っていた。

 真夜中に目が覚めた時、朝になって目が覚めた時、
 息子の手のあたたかさと小さな寝息生きていることを確認する。
 眠っているだけだということが、こんなにも嬉しいなんて
 生きていてくれるという ただそれだけのことが
 幸せだということに気づいた。