注射:がんばる力を引き出す

治療終了後はじめての採血

2005年(当時3歳)に退院して1年半の外来治療が続きました。薬の内服、採血、抗がん剤の静脈注射・筋肉注射・点滴、その副作用・・・本当によくがんばったと思います。採血や注射のときは一緒に処置室に入り、かすきのそばにいました。私がいなくてもできるんじゃないかと思うほど、泣いたり暴れたりしないでじっと処置が終わるのを待っていました。

2006年秋、5歳の誕生日を迎えた翌日に治療終了となり、その1ヵ月後に定期健診がありました。こんなに長いあいだ病院へ行かなかったのは、白血病になってから初めてのこと。本当にもう大丈夫なのだろうかという私の不安をかき消すように、かずきは日に日に元気になっていきました。治療中も元気に生活していましたが、あの頃の「元気」とはまったく違う、エネルギーが身体の中からあふれ出てくるような力強さと輝きがありました。からだの中に残っていた抗がん剤が外へ出ていったのでしょう。

さて、治療終了後はじめての採血。

「久しぶりだね、か〜くん!元気そうだね」

処置室から顔を出した看護師さんを見るなり逃げ出してしまいました。採血があることは話してありますし、「うん、わかった。嫌やけど・・・」とさっき答えたばかりなのに、手を引くとふりほどいてまた逃げ出し「いやだ!」と叫んで廊下の隅に座り込んでしまいます。なんとか処置室まで連れてきたものの、腕を出そうとしません。これが注射をする前の子どもの普通の反応なのかもしれませんが、かずきの様子に私も混乱してしまいどうしていいかわからなくなりました。

「今まではこんなことなかったのに、どうしてあんなに嫌がったの?」

「だって、注射も先生も大嫌いなんだもん!」

確かに、注射や処置をする先生を好きな子どもはいないでしょう。治療が終わったのにどうしてまた注射をするのかを話したけれど納得しておらず、ただ説明しただけで終わっていたことを反省し、次の外来に向けて何度もかずきと話をしました。

CLS 山本さんのアドバイス

しかし、外来のたびに「嫌!」がひどくなって、予防接種のときは大暴れ。事前に納得しているか確認をしても、処置前に鳴ると頭のスイッチが切り替わったかのように「い〜や〜だぁー!」と・・・。どうしたらいいものかと悩んでいたとき、ちょうど中部小児がんトータルケア研究会でチャイルド・ライフ・スペシャリストの山本さんとお会いすることが出来ましたので相談したところ、親身になって一緒に考えてくださいました。

いろいろな角度から物事を考えることができ、焦る気持ちを抑えて向き合うことができました。山本さん、ありがとうございました。

がんばる力を引き出す

かずきのがんばる力を引き出すためには・・・あれこれ考えて、何か楽しいことや嬉しいことがあれば「がんばろう」という気になるかもしれないと、「暴れずに注射が出来たら、病院の帰りにラーメンを食べに行こう」と提案すると目を輝かせて大賛成。

治療終了後1年3ヶ月経過した(2008年1月)外来で、処置前に「今日は、ちりめん亭に行くから!注射がんばる!」と、主治医や看護師さんに宣言し、「泣かなかったらお肉(チャーシュー)いっぱい入ったラーメンよ!」私のそのひと言でさらに目を輝かせ、チャーシューのために泣くことも大声を出すこともなくじっとして処置が終わるのを待ちました。とんこつチャーシュー麺のためにここまでがんばれるとは・・・

これでよかったのかわからないけれど、がんばって注射したことで自信を持ち、自分より幼い子にかっこいい姿を見せることができて自慢げに診察室から出て行きました。待ち時間に他のママとおしゃべりをしていて、その子のお子さんも治療が終わったとたん、処置をいやがるようになったということでした。かずきだけじゃなかったんだと思ったら私の気持ちもらくになりました。

帰る途中にちりめん亭で食事。チャーシューのおいしさにとろけそうな笑顔でした。

その後。。。

2008年3月の外来。この日も血液検査がありました。

「今日はちりめん亭じゃなくて、オムライスが食べたい!だから頑張る!」

採血のときも終わるまで暴れたり騒ぐことなく座っていて、先生の診察もきちんと受けました。以前泣き暴れたのは、採血も予防接種も注射した後に気分が悪くなるからということでした。今回も気分が悪いと言っていましたが、吐き気がする気分の悪さとは違うようでコーヒー牛乳をぐひぐび飲み、オムライスもたくさん食べました。

「だって、食べに行けるからがんばるだけ」

さて、次の外来の時は何を食べに行こうかな。楽しみがないとやってられないよね。